石川県・転職旅行記2

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 ちょうど地元の高校の下校時間と重なり、七尾線の車内は高校生でごった返していた。中・高と都心の男子校で育った僕は"田舎の高校生"という生き物を全く見慣れておらず「笑ってコラえて」のダーツの旅に登場する架空の生き物とすら思っている節があったため、隣の席に田舎の女子高生、正面に田舎の男子高校生、彼らを挟んで向かいの席には田舎のギャル、という状況はとても刺激的だった。隣席の女子高生が弁当の残りを食べ始めたときには思わず拍手しそうになったくらいだ。
 ゴトゴト揺られている内に高校生の姿も少なくなり、1時間ほどで七尾に到着した。ここからローカル線に乗り換えるのである。ホームに降りると、もはや姿を消したと思っていた高校生たちが他の車両からわらわらと降りてきたのでびっくりした。その内の半分くらいは検札台の駅員に定期を見せて慣れた様子でローカル線に乗り込んでいく。2両編成の、おもちゃのような電車である。
 問題が1つあり、僕はPASMOでここまで乗ってきたわけだが、このローカル線はICカード非対応なのだ。検札台の駅員に「ICなんですが」と聞くと、50代後半くらいのくたびれたバッタのような顔の駅員は「ダメだよそれは」ともごもごつぶやくように言った。ダメなのは知っている。
 どうすればいいのか聞くと、ICカードの精算は後日他の駅でなんとかして、とりあえず七尾から和倉温泉までの運賃を車掌に払ってくれとのことだった。ワンマン運転のその列車は、地方の路線バスのように、乗車駅で整理券を取って降車駅で料金を支払う仕様だった。
 幸運にも財布の中にはぴったりの小銭があり、和倉温泉駅での降車はスムーズだった。改札を出ると、旅館の送迎酒の運転手が待っていた。恰幅がよく、どことなくパディントンベアみたいな雰囲気がある。マイクロバスに乗り込むと、中年女性の2人組が穏やかに笑いながら何かを話していた。箱根でもイヤというほど見た組み合わせだ。

 客室からは海が見えた。

(旅行記はここで終わっている)

(いずれ追記します)


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筆者: すなば
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